機能性胃腸症といわれたら
2019年06月12日
病院での検査では異常がないのに、胃もたれや胃痛・胃の不快感なの症状が続く機能性胃腸症。悩んでいる人がたくさんおられます。
機能性胃腸症は以前は
- 慢性胃炎
- 神経性胃炎
- 胃痙攣
などと言われていた病気です。
ですが実際に炎症があるわけではないので、現在では機能性胃腸症という病名になりました。
<機能性胃腸症は改善出来るのです>
機能性胃腸症のお悩みはとても辛いことです。
ですが安心してください。
機能性胃腸症は改善できるのです!
ただ胃腸のお薬だけで根本改善することはないのです。
お薬は症状に対するものです。
症状が出る根本の原因を改善させるものではありません。
では、どうすれば改善できるのか?
そのためには「機能性胃腸症とはどんなものか」を知ると見えてくるものがあるでしょう。
機能性胃腸症とは
胃の検査や血液検査では異常は見つかりません。ですが胃もたれや胃痛、胃の不快感を感じる症状です。
この症状の特徴は
- 日本人の約25%にみられる
- 今後も増加していく傾向がみられる
になります。
症状
主な症状は胃やみぞおちにかけての痛みや不快感です。
症状の出現別に3つのタイプに分けられます。
<運動不全型>
日本では約6割がこの型になります。
症状は
- 吐き気、おう吐
- 腹部膨満感
- 食欲不振
- 胃もたれ
です。
この時の病態は胃の収縮機能が低下しているので起こります。
これにより腹部膨満感、食欲不振、胃もたれが、吐き気・おう吐が感じやすくなります。
<潰瘍型>
実際に潰瘍になっているわけではありませんが、胃に強い痛みを感じる状態です。
このタイプは胃の知覚神経が過敏となっているので、胃やみぞおちがキリキリと鋭く痛む状態です。
<非特異型>
運動不全型や潰瘍型には当てはまらないですが、常にどちらかの症状があります。
機能性胃腸症の原因
根本の原因はわかっていません。
しかし、
- 心理的ストレス
- 身体に対する物理的ストレス
の2つの影響があると考えられています。
機能性胃腸症の症状は薬のプラセボ効果による改善も多くみられる(約40~50%)ので、心理的な要因が強く考えられます。
検査では異常がないのに症状が出る状態を理解するには、胃の働きを知ることも有効だと思います。
<胃の働き>
胃は食べたものを
- 一時的にためる(1.5ℓ~2.5ℓ)
- 腸で吸収しやすくするために胃酸で消化する
働きがあります。この胃の働きは
- 胃の蠕動運動
- 胃酸の分泌
で行っております。
蠕動運動とは胃の動きのことです。
胃酸はPH1~2の強い酸性で食べたものを腸で栄養を吸収やすいように消化(溶かして分解)します。
量は1日に1.5~2.5ℓ分泌され多くは食事中に出ますが、胃を殺菌するために空腹時にも胃酸はある程度出ているのです。
<胃の働きをコントロールするのは? ①食事をしようとしたとき>
胃の働きをコントロールしているのは
「脳」と「自律神経」
です。
食事を摂ろうとしたときに、脳は自律神経の副交感神経を刺激して
- 胃の蠕動運動
- 胃への血液循環の増加
- アセチルコリンというホルモンを分泌して胃酸を分泌
を活発化させます。
<胃の働きをコントロールするのは? ②胃に食べ物が入ったとき>
食事が胃に入ったときはガストリンというホルモンが胃の細胞から分泌され、これが胃酸の分泌を促します。
<胃の働きをコントロールするのは? ③食べていない時>
食べていないときも胃の中を殺菌するために、胃酸は一定量分泌されています。この量はヒスタミンというホルモンによってコントロールされています。
<そして胃を胃酸から保護する為の胃粘液>
胃酸は非常に強い酸で金属も分解してしまいます。
この強い胃酸から胃を守っているのが
「胃粘液」
の働きなのです。
これは胃酸とともに胃から分泌され、胃が痛まないように保護しています。
何故胃が痛くなるのか
- 胃酸と胃粘液のバランスの問題
- 胃酸のコントロールの問題
- 胃自体の問題
が考えられます。
1.胃酸と胃粘液のバランスの問題について
胃酸と胃粘液の分泌のバランスがとれていれば、胃の粘膜が荒れることはありません。
ですが、何らかの原因でこのバランスが崩れると胃酸過多の状態になってしまい胃の粘膜を荒らします。
【胃粘液増加では問題は起こらない】
胃の粘膜への血液循環量が低下を起こすと胃粘液の分泌は減少します。
この原因の多くは、胃の動きやホルモンバランス・胃への血液循環をコントロールしている自律神経の乱れになります。
2.胃酸のコントロールの問題について
また十二指腸から出る消化液も、胃酸の分泌をコントロールする働きがあります。
これが正常に出ていれば、胃酸をある程度コントロールできます。
胆嚢や膵臓に問題があると、十二指腸からの消化液は減少しますので、胃酸のコントロールは難しくなってきます。
胃の粘膜が荒れて傷ついた状態が長く続くと、胃粘膜が炎症を起こす胃炎や胃潰瘍になることもあります。
ですが機能性胃腸症では炎症が起こりません。だから胃酸の問題とは考えられないのです。
3.胃自体の問題について
そこで考えられるのは
胃の中よりも胃自体、もしくはその周囲の問題
が推測されます。
たとえばこの症状をお持ちの方はお腹が非常に固いです。これにより胃に
- 筋肉痛
- けいれん
- 動こうにも周りが硬くて動けない
などのような、硬くなりすぎての問題もあるのではないかと考えています。
蠕動運動を起こす胃の筋肉への血液循環が不足している状態、もしくは血液循環はいいが栄養や酸素が足りない状態、胃の周りがこわばっているので胃がうまく働けない、などです。
どうすればいいのか
根本の原因はわかっていません。
しかし、発症の原因となっているであろう
- 食生活の改善
- ストレスへの対処法
が症状改善には重要となります。
食生活の改善
食生活を改善することによって、胃にかかる負担を減らします。
- よく噛む:よく噛むことにより胃にかかる負担が軽減されます。
- 食事内容に気を付ける:脂肪分の多いもの、固いものは胃に負担がかかります。また冷たいもの、甘いものも同様に胃に負担をかけてしまいます。
ストレスへの対処法
この悪循環に陥った関連性を断ち切ることができれば機能性胃腸症の症状は改善できます。
そのためには
①ストレスへの考え方を学ぶ
ストレスのとらえ方(考え方)を学ぶことは有効です。自分一人で解決させようとせず、相談できる人を見つけることも症状改善には大事なことです。
②十分な睡眠時間
睡眠時間が短いと夜間の胃酸の分泌促進されるので、胃粘膜が荒れやすいです。また睡眠不足が続くと体力が低下しますので、ストレスに弱くなってしまいます。
③適度な運動
適度に運動するとストレスの発散になります。また血液循環も改善し、自律神経も整いやすくなります。
自律神経が整うと、胃や腸など消化器も正常に働けます。
腹式呼吸も有効な体操にになります。自律神経を整える運動だからです。さらにはおなかも動かしますので、その動きにより胃のマッサージ効果も望めます。
まとめ
機能性胃腸症の症状は改善することが出来ます。
ですが、根気よく取り組むことが必要です。
ポイントは
- 自律神経のバランスの改善
- 身体の健康状態の改善
です。
食事や運動、ストレスへの対応など自分でできることも多いです。
ですが自分一人で出来る人はごくわずかです。
症状改善には時間がかかるので、自分のやっていることに不安を覚えてしまうからです。
自分ではどうしていいかわからない、早く改善させたいと思う人は当院までご相談ください。